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腰痛とは

 ​腰痛は、最も多い慢性病の1つで、男性は「第 1 位」女性は「第 2 位」と痛み原因では非常に多い疾患です。しかし、痛みの原因は様々で根源をつきとめることが重要ポイントです。

非特異的腰痛​​

 医師の診察および画像の検査(X線やMRI など)で腰痛の原因が厳密に特定できないものを非特異的腰痛といいま。腰痛の約 85%はこの非特異的腰痛に分類されます。通常、 腰痛症と言えば非特異的腰痛のことを指します。この原因不明の腰痛はMRIでも47%が正常であるという特徴があります。腰痛の予測因子は、MRI・椎間板造影所見よりも、 精神性因子(社会的因子、心理的苦痛、恐怖回避の思考) が大きいことも分かってきました。

特異的腰痛

 原因が確定できる特異的腰痛は、医療機関を受診する腰痛患者の15%くらいの割合といわれています。その内訳は、腰痛自体よりも「座骨神経痛」を代表とする脚の痛みやしびれが主症状の疾患である腰椎椎間板ヘルニアと、腰部脊柱管狭窄症がそれぞれ4~5%、高齢者の骨粗鬆症の方に多い圧迫骨折が約4%、結核菌も 含む細菌による背骨の感染(感染性脊椎炎)や癌の脊椎への転移など背骨の重篤な病気が約1%、尿路結石や解離性大動脈瘤など背骨以外の病気が1%未満です。

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筋・筋膜性腰痛

ぎっくり腰(腰椎捻挫/急性腰痛/腰部挫傷)

 ぎっくり腰とは、くしゃみや、重いモノを前かがみで持ち上げようとした時に激痛が走る事があります。医学的には腰椎捻挫などと言いますが、分類として非特異的腰痛の1つで「筋・筋膜性腰痛」に分類されます。ぎっくり腰は、 椎間板を代表とする腰のケガとなります。

症状は、「ギックッ!」となってからは、日常生活が困難になるほど動けなくなります。受傷してから1~3日後には、受傷部位周辺の筋肉が、ケガを守ろうとする筋性防御が働き、カラダが歪んだり、骨盤周りの筋肉や、おしりの筋肉が張り、腰全体が痛いという二次的腰痛を伴います。1週間から15日で症状が改善していきますが、1度なってしまうと再発する可能性が高くるため、早めの適切な処置必要となります。10日以上の痛みが続き、痛みが増すようであれば内臓の問題や腫瘍の可能性がありますので、その場合は一度病院での受信をおすすめします。

 

※腰痛症(筋・筋膜性腰痛 椎間関節性腰痛 椎間板性腰痛 仙腸関節性腰))とも言います。

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非特異的腰痛

非特異的腰痛

椎間関節性腰痛

​急性と慢性とに分けられる

 椎間関節性腰痛症は、物理的なストレスを受けやすい急性腰痛と、炎症性や変形性の慢性腰痛の2つに別れます。主に、変形性関節症による椎間関節の変化が多く見られますが、疼痛と変化した椎間関節は相関しないともいわれています。しかし、椎間関節の関節包には、脊髄神経後枝が多く分布しており、関節軟骨部にも多くの知覚神経が分布するため、痛みの原因になりやすいと言われています。

急性の場合は、椎間関節によるぎっくり腰が考えられます。筋・筋膜性腰痛によるぎっくり腰との鑑別として、しびれをともなう腰部下部の片側性(稀に両側)の激し痛みや、背屈、回せん制限、脊柱上の痛み、背骨から2,3センチ外側の椎間関節部の圧痛がみられる場合は、椎間関節ぎっくり腰。立ち上がりの際に痛みが大きくなったり、立位前屈制限の場合は筋・筋膜性ぎっくり腰と鑑別します。なりやすい人の特徴として、日頃、体をひねる動作が多い30才代に多い疾患です。

また、体を背もたれなどに預けると痛みが緩和する特徴があります。

 

 慢性の場合には、急性同様、腰の下のほうの痛みが多く、カラダの防御反応として殿部、大腿外側の張りが強くなり疼痛​などを誘発します。中高年に多く65歳以上に最も多い疾患です。

 

仙腸関節性腰痛

​腰の土台は仙腸関節

 

 仙腸関節の動きは、とても少なく3~5mm程度のわずかな動きしかしません。上半身の動きを安定させるよう、ビルの免震構造のように脊椎のバランスをとっていると考えています。3大要因として、スポーツ選手のようにオーバーユース(使い過ぎ)で発症する場合、出産後に仙腸関節開き痛みが発生する場合、ぎっくり腰のような仙腸関節捻挫の症状が多いようです。

特徴として、長い時間椅子に座れない、仰向けに寝れない、痛いほうを下にして寝れない、という症状があり、歩行開始時に痛みがあるが徐々に楽になる、正坐は楽という特徴があります。

 

診断としては、人差し指で痛みの部位を示してもらうワンフィンガーテストが有効です。

街でよく聞く骨盤矯正とありますが、動かしている場所はこの部分になります。しかし、仙腸関節の周りには、抗重力筋や沢山の靭帯があり、そう簡単には動きません。反対に簡単に動いてしまってはカラダを支えることができなくなってしまいます。一時的に動かしたとしても、周りの筋肉や靭帯を調整しない限りすぐに元に戻る性質があります。​​​

子供'秒のポーズ
椎間板性腰痛
仙腸関節腰痛

精神性腰痛(心因性腰痛)

非特異的腰痛の2/3

 

 腰痛の中には、ストレス、不安、鬱(うつ)などの心の不調が原因となっているものがあります。こうした腰痛は精神性腰痛(心因性腰痛)と呼ばれ、ストレスの多い現代社会において非常に多く見られるようになりました。

 

精神性腰痛症の特徴的な原因として、骨や筋肉のダメージ、あるいは内臓の病気による痛み(器質的な痛み)、神経の障害による痛み(神経痛)、精神的ストレスによる痛み(非器質的な痛み)が上げられます。その中でも「心理・社会的要因」が大きいとされています。

実際、心理的な要因によって、特定の臓器や器官に身体的症状が現われる病気を「心身症」と呼ばれています。気分がすぐれない時に、体の不調を伴った経験はありませんか?心とからだは繋がっているのです。
また、「病は気から」や「プラセボ効果」という言葉があるように、その人の気持ちの持ち方や、その時どきの心理状況によって、カラダに状態が変わってくることも証明されています。

 

痛みを抑えるメカニズム

 

 人間の脳には、痛みの信号を抑制するシステムがいくつか備わっています。このシステムを下行性疼痛抑制系といい、普段の生活で疲労性の痛みが発生した時に、これをブロックして痛みを和らげてくれます。また、こころの「快楽」「気持ちが良い」と高揚すると、脳内物質の、β-エンドルフィン、エンケファリンが分泌され痛みを抑えるとされています。

 

また、生活習慣の乱れ(暴飲暴食や過度の飲酒・喫煙など)で、カラダにとって強いストレスを受け続けてと、自律神経のバランスが崩れ、腰痛をはじめとする様々な症状が出てきます。これを「自律神経失調症」といいます。自律神経、副交感神経がお互いにバランスを取り合ってすべての内臓の活動を無意識。

痛みに意識を集中したり必要以上に恐れるほど、より痛みを感じやすくなることがあります。これは脳で記憶をつかさどる「海馬」という部分と、恐怖などの感情をつかさどる「扁桃体」という部分に密接な関係があり、互いに影響しあっているためストレスや不安を取り除くことで痛みが軽減されます。

スキャンの分析
理学療法士

椎間板性腰痛

​椎間板ヘルニア/椎間板症

 痛みの特徴として、背骨の中心部に重だるい痛みや、特定しにくいボワッとした痛み、前かがみになると痛いなどがあります。この痛みは、数分から数十分座っていたり立っていたりすると痛みが強くなり、横になると和らぐという性質があります。また病院では、椎間板造影を行い、薬液を注入したときに、普段の腰痛が強く再現するかどうかで椎間板性腰痛かどうかを診断します。

 

原因として、過剰な負荷、加齢による変化などにより椎間板の繊維輪に亀裂が入り、神経が圧迫されるため痛みが起こると考えられています。押しつぶされた髄核が周囲の線維輪を突き破り、外に飛び出した状態を椎間板ヘルニアといいます。椎間板症は間板ヘルニアが起こる前の段階であると言えます。

長時間同じ姿勢をとることが多い人・前かがみの姿勢が多い人・立ち仕事が多い人・ひんぱんに腰の筋肉痛を起こす人・スポーツ選手に症状が出やすいです。

特異的腰痛

椎間板性腰痛
精神性腰痛
特異的腰痛

悪性疾患性腰痛

 

脊髄や脊椎の腫瘍について

 

 体が腰痛を引き起こす可能性のある病気・障害の一つに「脊髄腫瘍・脊椎腫瘍」があります。腰や背中に"しつこく続く鈍い痛み"、徐々に痛みが増し、安静にしていても痛みがあり、手足がしびれたり、感覚が鈍くなるなどの症状は要注意です。

脊椎や脊髄の悪性腫瘍の場合、ほとんどが他組織で発生したガンが転移したものです。特に乳がんからの転移が多く、肺がん、胃がん、前立腺がんも脊椎・脊髄に転移しやすいようです。

​思い当たる症状がある場合は早めにお近くの脳神経外科がある病院で受診されることをおすすめします。

腰痛セルフケア ≫

血管性腰痛

坐骨神経痛に似た症状

 

 血管性腰痛は、動脈瘤や抹消血管性疾患によって坐骨神経痛に似た症状が現れます。筋力の弱化、間欠破行などの症状も見られ、閉塞性動脈硬化症、腹部の腹部動脈瘤が原因と考えられます。今のところ血管に対する処置のみで軽減する腰痛のことを、血管性腰痛という概念になります。

​思い当たる症状がある場合は早めにお近くの循環器内科がある病院で受診されることをおすすめします。

感染症性腰痛

 

​高齢者が注意

 

 高齢化や糖尿病患者の増加など、感染に弱い状態にある人の増加により、細菌感染による背骨の病気は、決して一部の人の病気ではなく、特に感染脊椎炎は抵抗力が低下しているときには注意が必要な病気です。この腰痛は、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎、大腸炎、肺炎、胆のう炎、扁桃炎、卵巣炎などが原因で起こります。​

 

思い当たる症状がある場合は早めにお近くの循環器内科がある病院で受診されることをおすすめします。

血管性腰痛
感染症性腰痛

炎症性腰痛

 

判断基準について

 

 整形外科では、炎症性腰痛の診断基準は下記5つの特徴のうち4つを認める場合に、炎症性腰痛と診断されます。

1.腰痛の発症が40歳以下
2.発症が緩徐
3.運動で軽快する
4.安静で軽快しない
5.夜間痛(起き上がると軽快)

 

強直性脊椎炎に関しては、単純X線像の仙腸関節所見が特徴的なため診断は比較的容易です。しかし、強直性脊椎炎ではない脊椎関節炎も存在するので注意が必要です。上記の症状が長引き頑固な痛みや普段と違う痛みがある際には、早めにお近くの整形外科がある病院で受診されることをおすすめします。

改訂ニューヨーク基準

(Modified New York Criteria,1984年) 

 


A.診断  
1. 臨床基準  
a)運動により改善し、安静によって改善しない、3ヵ月以上持続する腰痛  
b)矢状面、前頭面両方における腰椎可動域制限  
c)年齢、性別によって補正した正常値と比較した、胸郭拡張制限  

2.X線基準  両側のgrade 2以上の仙腸関節炎、あるいは一側のgrade 3~4の仙腸関節炎 

B.等級 
1.確実例:X線基準と、1項目以上の臨床基準を満たす場合 
2.疑い例:  
a)X線基準を満たさないが、臨床基準3項目を満たす場合  
b)X線基準を満たすが、臨床基準が一つもみなれない場合  

Ⅹ線基準のgrade  
grade 0:正常  
grade 1:疑わしい変化  
grade 2:軽度の仙腸関節炎(関節裂隙の変化を伴わない限局的な骨侵食や硬化)  
grade 3:中等度の仙腸関節炎(骨侵食、硬化、裂隙の拡大や狭小化、部分的な強直を伴う)  
grade 4:完全な強直 

外傷性腰痛

 

怪我による腰痛

 

 外傷性とは「怪我による」という意味です。腰痛の場合は骨粗鬆症を含めた腰椎骨折や腰椎脱臼、腰部打撲による、腰部の筋断裂などが「外傷性」に分類されます。

多いのが、交通事故によるもので、自動車との接触やバイクとの接触、或いはバイクや自転車で走行中に転倒などがあげられます。他にも、尻もち事故、階段・段差や歩行中、雨や雪の日に転倒して腰臀部などを強打することです。

 

また、年配者や強度の運動により、腰椎分離すべり症・腰椎分離症になる事もあります。一般の人では5%程度に分離症の人がいますが、スポーツ選手では30~40%の人が分離症になっています。しかし、分離症があっても強い痛みや日常生活の障害なく生活できる場合が大部分です。神経根圧迫によるお尻や下肢の痛みで日常生活や仕事に支障が生じれば、神経の圧迫を除去する手術や固定術が行われます。

 

予防として、腹筋・背筋を強化して、一般的な腰痛予防を心がけましょう。

外傷性腰痛
炎症性腰痛
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