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頚肩部痛とは

 ​頚肩部痛には様々な原因があり、同じような症状でも、原因は様々です。長期間のVDT作業(PCや携帯など表示機器を使用した作業)で起こることが大半ですが、原因が1つだけとは限らず、複数の根源をつきとめることも重要ポイントです。

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頚肩部痛

石灰沈着腱板炎 

​動かさない事で固まる②

 石灰新着腱板炎は、40~50歳代の女性に多くみられます。肩腱板内に沈着した「リン酸カルシウム結晶」によって、急性の炎症が生じ、肩の疼痛・運動制限がおこります。

この石灰は、はじめは濃厚なミルク状で、時間がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。石灰が、固まり膨らんでくると痛みが増強してきます。そして、腱板から滑液包内に破れ出る時に激痛となります。

症状として、肩関節周囲炎やインピンジメント症候群とよく似ており、X線(レントゲン)撮影によって腱板部分に石灰沈着の所見を確認する事によって診断します。石灰沈着の位置や大きさを調べるためにCT検査や超音波検査なども行なわれます。ほとんどの場合、手術はせず運動療法で改善しますが、亜急性型、慢性型では、石灰沈着が石膏状に固くなり、時々強い痛みが再発することもあります。その場合、整形外科にて腱板に沈着した石灰を注射針で破り、ミルク状の石灰を吸引する方法が行われています。その後は安静を計り、消炎鎮痛剤の内服し、滑液包内注射などが有効とされています。

痛みが和らいだのち、入浴や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行っていきましょう。

肩関節周囲炎(四十肩・五十肩) 

​動かさない事で固まる肩廻り

 症状として痛みで眠れない、腕が肩の高さ以上は挙がらないなどがあります。

ほとんどが、長期にわたって肩を動かさずに悪い姿勢などで、周りの靭帯が繊維化し関節包が瘢痕化することで肩関節拘縮がおこります。

「筋痙縮期」

初期症状として、鋭い痛みと炎症が強い時期。痛みが筋肉のけいれんを引き起こし、さらに痛みを増加させてしまいます。この時期の治療としては、痛み止めなど、炎症を抑える治療が有効とされます。(無理に動かさない)

「筋拘縮期」

筋痙縮期を過ぎると、肩を動かした時の痛みは少し減ってきます。しかし、柔軟性が戻っているわけでは無いので、肩が硬くこわばり、動かせる範囲が制限されます。よって無理のない範囲で動かしていくことが大切な時期です。この時期から肩の高さまで腕を挙げられるようにストレッチを交えていきましょう。

 

「回復期」

回復期はリハビリを徹底的に行う時期です。運動療法として、毎日のストレッチや専門の治療院で肩関節及び肩甲骨の柔軟性を取り戻す必要があります。ストレッチをする際は、ゆっくりお風呂に浸かり、肩を温めてからおこなうことを勧めします。

※痛みが酷く生活に支障が出る場合には、ペインクリニックや麻酔科での局所麻酔と運動を組み合わせる方法もあります。整形外科や、ペインクリニックで治療してもらいましょう。

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肩周囲炎
石灰沈着腱板炎

肩関節唇損傷

 関節唇は、肩の受け皿としての役目をもつ肩甲骨関節窩の輪郭の周囲を取り巻くように覆った繊維状の組織のことを言います。
関節唇は、上方関節唇、前方関節唇、後方関節唇、下方関節唇などの部位で構成され、上部の関節唇には、上腕二頭筋長頭筋腱と呼ばれる肩の安定性を高めるための腱がついています。前方、後方、下方の関節唇には関節包靭帯と呼ばれる肩関節が前後のずれを少なくするためについています。つまり、関節唇は肩関節の安定性を高めて、肩の脱臼を防いだり、前後や上下にぶれないようする役割があります。


しかし、肩を酷使したり使い方が悪いと損傷を受けたりすることがあります。関節唇は、本来、関節の動きを助ける働きがありますが、損傷によってかえって動きを阻害する要因になってしまうことがあります。こういった状態を「肩関節唇損傷」と言います。

肩関節唇損傷はオーバーヘッド動作をする人に起こりやすい症状で、この過程が繰り返されることで、関節が少しずつゆるんでいき、関節唇に負荷がかかることで損傷が起こります。
 

また、亜脱臼などの外傷によって引き起こされることもあり、保存療法で筋力強化や予防ケアをする場合もあれば、手術によって改善を目指す場合もあります。
1度はがれてしまった関節唇は自然に元通りになることが少ないため、手術をする人も少なくありません。

 

予防として、関節唇への負担を避けるためにも、体の筋肉バランスを見直し、フォームを改善したり、予防ケアにつとめることが重要だと言えるでしょう。

頚椎捻挫・頚部筋損傷(ムチウチ)

​追突事故でおこりやすい

 交通事故や、歩行時に、交差点などで不意に何かにぶつかるなどの急な原因で、首周囲の筋肉や関節、靱帯に傷がついた状態をいいます。極度の伸展でも起こることがあり、過伸展過屈曲症候群ともいいます。きっかけとなる原因のあった日の2、3日後にかけて痛みが強くなります。程度は様々ですが首が痛みで回らない、全く動けなくなる状態から、肩こり、背中の痛み、腕のシビレ、頭痛などが強く出てくる場合があります。

 

種類として

捻挫型
首や肩が痛み、動かしにくいなどの寝ちがいや肩こりに似た症状を示すタイプで、頸椎捻挫の70~80%はこのタイプといわれています。X線やMRIで撮影しても頸椎に異常は発見できませんが、椎間板に小さなひびが入ったり、靱帯に小さな断裂ができたりしていると考えられています。
●治療
まず、くびの安静を保つことがたいせつです。安静のためにくびにカラーを巻くこともあります。 ただし、起きて、頭を支えているかぎり、首に負担がかかり、筋性防御が働くため、早めの施術(マッサージ)が必要になります。症状が軽いときでも2~3日、強いときには施術に10日ほどかかります。通常、2週間ほどで治りますが、重症の場合は、3週間くらいかかることもあります。


神経根型
首の痛みや腕の知覚異常をおもな症状とするタイプです。この症状は、椎間孔から出て腕のほうにのびている神経が、上下の頸椎に挟まれるためにおこるもので、首を曲げたり、回したり、せきやくしゃみをしたときに強く感じるのが特徴です。
●治療
神経の圧迫症状があるときは、損傷も頸椎型よりも大きいと考えられます。2~3週間は、横に寝てくびの安静を保つことが必要です。極度の筋防御が働くため専門知識を持った治療院での施術が必要です。6週間以上も神経の圧迫症状がとれないときは、一度、整形外科での受信をお薦めします。

■脊髄型(せきずいがた)
下肢(かし)(脚(あし))のしびれ感や知覚異常など、くびよりも下肢の症状が目立つタイプで、歩きにくくなったり、便や尿が出にくくなったりすることもあります。これは、脊髄が損傷されたための症状です。治療は、神経根型に準じます。


■バレリュー型(後部頚交感神経症候群)

後頭部やうなじの痛みとともに、めまい、耳鳴り、疲れ目、顔・腕・のどの知覚異常、声がれ、飲み込みにくい、胸が締めつけられるような感じなどの症状をともなうタイプです。これらの症状は、交感神経のはたらきが異常になったためのものです。頸椎捻挫を負う事故にあった後、適切な安静が保たれないとおこることが多いといわれています。後遺障害の等級認定にあたっても、困難を伴うことがあります。治療は、神経根型に準じます。

関節唇損傷
頸椎捻挫

腱板損傷

 

​二つの原因

 

 腱板とは、別名インナーマッスル、ローテータカフ、回旋筋腱板と言われ、肩甲骨廻りに付着し、肩の細かい動きの調整をする筋肉をさします。

動かし過ぎによる腱板損傷(スポーツ障害)

棘上筋の損傷として、腕を振り上げ動作がある、野球・テニス・バレーボール・体操などに多く、骨と腱板が衝突する事で腱板を痛めます。ほとんどが使い方の問題と肩甲骨が正常に動いていないことでおこります。

​症状として夜間痛や運動時痛とあります。主に運動時棘上筋を挟み込む(インピンジメント症候群)などでいたみが出現します。検査として腕を真横に上げ60°から120°の角度で痛みが出現し、それ以外は痛みが出ない症状があります。上げる時には主に上方で痛みが出現し、下げる時には90°よりか下方で痛みが出現することが多いです。

 

棘下筋の損傷として、肩打ちのバレーボール選手に多く、肩甲上神経障害によりおこり、触診で明らかに筋の痩せが触知でき、筋力の弱化が認められます。しかし棘上筋との同じユニットのため、棘上筋も痛めている可能性が高いです。

悪さをするのが、肩甲下筋です。損傷とまではいきませんが、肩甲骨と肋骨に挟まれているためアプローチがしにくい場所です。この部分を緩め肩甲骨の動きを出すことで上記の疾患予防になってきます。

動かさな過ぎによる腱板損傷(老化・血行不全)

老化と共に、腱の変性や血行不全により、徐々に腱板が痛んでいき、肩甲骨の動きが悪くなることも付随して腱板にダメージを与えていきます。50歳以上の1/4は無症候性断裂だと言われています。症状として筋力が弱化し筋肉が痩せてきます。

腱板損傷

​変形性頚椎症・頚部脊柱症

 変形性頚椎症は、主に頸椎の加齢変化を原因として頚部痛や肩こり、背部痛などの局所症状を起こす病気です。 
 

頚椎は7個の椎骨から構成されていて、椎骨同士は椎間板と椎間関節で連結されています。椎間板は年齢とともに水分の保持能力が低下し、内圧が減少して支持性が低下します。それに伴い、上下の椎体の辺縁に骨棘と呼ばれる骨突出部ができたり、椎間関節が磨り減ったりする一連の加齢変化が生じます。その結果、椎骨や頚椎全体の形状が変化するため変形性頚椎症と呼ばれます。 
 

 変形により脊髄が圧迫されると頚椎症性脊髄症、神経根が圧迫されると頚椎症性神経根症と呼ばれ、本症とは区別されます。原因は前述のように基本的には加齢変化ですが、かなり個人差があります。また、主症状である痛みの由来として、椎間板・椎間関節・筋肉・靭帯などさまざまな組織があげられます。

検査としては、X線検査で加齢変化を認める場合、変形性頚椎症の診断がつきます。しかし、加齢の場合、X線での画像診断が必ずしもあてにならないと言われているため、痛みが強かったり、手足のしびれなどの他の症状が出現したりする場合には、MRI検査などをお薦めします。

​治療としては、対処療法が基本で、首肩回り背中の筋肉をほぐし自然治癒能力を高め、かつ治癒を促進させます。セルフケアは、首回りのストレッチや、筋弛緩法で血流循環を良くすることが重要になります。

変形性頚椎症

頚椎椎間板ヘルニア

 

中高年に多い2つの症状

 

 頚椎ヘルニアは20代から年配者まで幅広く発症しますが、主に中高年に多い疾患とされています。症状は大きく分けて2つあります。1つに、椎間板から飛び出た髄核が、神経圧迫されることでおこる片側の神経症状で、首から腕にかけて痛み、シビレ、感覚鈍麻、筋力低下、が上げられます。神経が阻害されることによりおこる疾患なので、情報が正確に伝わらなくなります。この痛みは激烈なものですが、ほぼ2-3週間でピークを越え、あとには鈍い痛みやシビレが残り、これが数週間から数ヶ月で痛みがおさまることが多いです。

 

もう1つは、脊髄症症状が原因となり、両側に症状が現れ、両手にシビレがみられたり、両手を使って行う細かい動作が徐々にしにくくなったり、同時期に両足が足先から段々とシビレてきたり、尿や便通に問題が起きたり、歩行が不自由になるなどの症状が数日から数週間の経過で急速に進行していきます。この場合は、脊椎や脊髄の手術に力を入れて行っている、脳神経外科・整形外科の受診する事をお薦めします。

 

ただ、近年ヘルニアといわれている物は、自然治癒していくとされています。じっくりセルフケアをおこない、定期的に血流循環を目的としたマッサージで治癒する疾患なのです。痛みが減ってきたら少しずつ運動を入れ、飛び出た椎間板の除去を早めましょう。

頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)

 めったにない疾患ですが、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨になった結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気です。主に50歳前後多く見られ、レントゲン写真で骨化があっても必ずしも全員が症状を出るわけではなく、実際に症状が出現するのは一部の人とされています。骨になってしまう脊椎は頚椎に限らず、胸椎後縦靱帯骨化症、腰椎後縦靱帯骨化症も存在します。

この病気に関係するものとして、遺伝的素因、性ホルモンの異常、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレス、またその部位の椎間板脱出などいろいろな要因が考えられていますが原因の特定には至っていません。特に家族内発症が多いことから遺伝子の関連が有力視されています。また、後縦靱帯骨化症は黄色靱帯骨化症、前縦靱帯骨化症を合併しやすく、骨化部位は縦方向や横方向に増大、伸展していきます。

 

症状として、首筋や肩甲骨周辺・指先の痛みやシビレがあります。さらに症状が進行すると、次第に痛みやシビレの範囲が拡がり、脚のしびれや感覚障害、足が思うように動かない等の運動障害、両手の細かい作業が困難となる手指の巧緻運動障害などが出現します。この場合は、難病指定がある病院の受診をお薦めします。

​肩関節脱臼

 

 肩を脱臼してしまうと、ガクッという肩が脱臼する音と共に、かなり激しい痛みに襲われ、肩がまったく動かなくなります。無理に動かそうとすると、肩に激痛が走ってしまいます。肩を脱臼している場合、肩周囲の靭帯を損傷しているため、激しい痛みと腫れが生じます。肩を脱臼してしまった場合、早期に整復する事が必要です。そのままの状態であればいつまでも激痛を伴います。整復後はギプスなどで固定をする必要があり、だいたい3~4週間の固定が必要です。

 

脱臼は一度脱臼してしまうと関節がゆるくなり脱臼グセがつきます。クセにならないようにするには、リハビリがとても重要です。リハビリを行う場合、あくまでも損傷した肩に影響のない範囲で行う必要があります。そのため、まずは手指の運動から始め、受傷後1週間ほどで軽く肩を動かしながら、3週間後から肩関節を90度上げる範囲で軽く運動を行ないます。
肩を動かすことに痛みが無い場合には、肩周りの落ちた筋力をもとに戻すため、少しずつ筋トレを行います。方法は高負荷をかけるのではなく、ゴムチューブなどを使った軽い負荷で行います。しばらくは、周りの筋肉で安定させるように適度な運動を続ける必要があります。

頚椎ヘルニア
頚椎後縦靭帯骨化症
脱臼
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